イベントレポート

音楽 × テクノロジー イスラエルスタートアップとミュージシャンが集まるミュージックテックのイベントに参加してみた

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音楽×テクノロジー イベント写真

 

今回のテーマは

『テクノロジーは音楽業界によって作り出された伝統という壁を乗り越えることができるのか』

ゲストスピーカーに、イスラエル音楽業界で活躍する4名を迎えて行われたイベントの内容を紹介する。

ゲストスピーカー紹介

まずはゲストスピーカーを写真の左から紹介しよう。

Ran Geffen氏
起業家であり、音楽とテクノロジーを融合させたアーティストや企業の指導者。 イスラエル国内外の主要な音楽出版社を代表するMedia Men Group Publishingの共同設立者としても有名。

Yaniv Grady氏
デジタルコンテンツ起業家兼、Accomの事業部責任者。

Eyal Bason氏
数学者、プログラマー、ミュージシャン、アーティストマネージャー、プロモーター、レーベルに適応したデジタルマーケティングエージェンシーの創始者。

Noga Erez氏
イスラエルのテルアビブを拠点とする国際的なミュージシャン、電子プロデューサー、マルチインストルメンター。SXSW、The Great Escape、Convergence、Primaveraなどの出演歴あり。

 

テクノロジーが音楽業界を崩壊させた。


この世界には著作権というものが存在する。
これはクリエイター(ここでのクリエイターとは歌手、作詞家、サウンドエンジニアなど、音楽制作に関わる人のことを言う)の権利を守ることで利益をクリエイターに分配するためのものだ。
そしてそれらの権利を管理する、著作権管理団体というものが世界中に存在する。
音楽の利用者は著作権管理団体にお金を払い、音楽の使用許可を得る。そして著作権管理団体はそれらのお金をクリエイターに届くようにレーベルやプロモーション会社に分配する仕組みだ。

しかし、Ran氏曰く、それらの分配が正式に行われているかどうかは不透明。
そこで世界で10番目に大きい韓国の例が挙げられた。
韓国の著作権管理団体には200万のデータベースしかなくほとんどがK-POP。
彼らはTVやストリーミングサービスなどからフィンガープリント技術を使い、すべての使用された音楽を検出し、著作料を得る。
かなりの大金を世界中から再生された音楽を検出するために使っているが、その他は不明で、ブラックボックス化しているという。
そしてそれらのお金は地元の著作権管理団体の投票によって分配されている。
不透明なので一概には言えないが、アーティストやライターに正しく支払われてはいないだろう。そしてこれは世界中で起こっている。

テクノロジーによって音楽の形が、かつてのアナログの形式からストリーミングなどに移り変わり、CDやラジオの流通のみならず音楽業界のトラフィックは複雑で、それらを管理している組織も複雑化してしまっている。

世界には約200の著作権管理事業者があり、それぞれに独自のIT部門、独自のシステムを保有している。
同じ機能を別々の場所で幾度も構築しあっている。これはクリエイターから得た予算の無駄遣いではないか?

 

著作権管理団体を統合すればいいのでは?


議論の中で出た案がこれだ。クラウドのような仕組みで一元管理すればオペレーションのコストが格段に減るはずだ。
しかし、これには反対意見が優勢だった、一つの仕組みが力を持つことは危険であり、一つの組織が力を持てばそれを変えるのもその分難しくなる。また顧客との距離も遠ざかり、私たちを人として扱うのもむずかしくなる。
現在のシステムが今のベストであるという考え方が自然という結論に落ち着いた。

ここには後々、ブロックチェーンが入り込んでくるであろう、ただ今回のイベントでは語りきれないほどのトピックになるため、今回は議題に挙げられなかった。

 

コンテンツが王様か、データが王様か


Youtubeは2006年9月、Googleに16億5,000万ドルで買収されたがその当時、アップロードされていたコンテンツのほとんどは音楽で、さらに著作権で守られていないものだった。

それはアーティストが作った音楽に価値は0で、ユーザーのデータに10億ドル以上の値がついたことを意味している。

その他の例を見てみる

Ran氏によれば、アメリカの人気ポップ歌手、テイラースウィフトの2016年の収入が73億で、そのうち61.4% がコンサートツアーなど、ライブからの収入 それに比べて収入のうちストリーミングサービスが占める割合は1%未満だった。

しかし、その収入の割合とは裏腹に、
2017の音楽業界で1番収入が多かったのはuniversalミュージックのトップでもなければ、アメリカで最も成功したアーティストでもなく、音楽ストリーミングサービスのSpotifyのトップだ。

これらから言えることはコンテンツよりもデータに価値があるということ
コンテンツはもう王様ではない
現代ではデータが王様であるといえるだろう。

 

テクノロジーによってクリエイターの収入は消えていない、むしろバリューギャップに歯止めをかけているのはテクノロジーパーソンである。

各音楽メディア 利益比較

(Yaniv氏のプレゼン資料より)

Yaniv氏によれば、テクノロジーのおかげでクリエイターの収入が守られている。
このグラフはTV&ラジオ、音楽の有料ストリーミングサービス、動画の広告モデルで上がる収益を示したもの。すべてオンラインで完結しうるものだが、TV&ラジオと有料ストリーミングサービスを比較すれば、かなりの収益のギャップ(バリューギャップ)があることがうかがえる。

音楽業界のビジネスマンや技術者は少しでも他のセクターにお金が流出しないように戦っているという。
彼らがいなければ他のセクターにお金が流れ、さらなる収入の低下が起こる。

 

テクノロジーはどのようにクリエイターと共存すべきか


ビジネスサイドで活躍する三者の意見は以下の通り。

Ran氏
「今日のテクノロジーは権利の分配においてはすでに十分なほどに使いやすいし制度も高い、フィンガープリントなどもその例だ。著作権管理団体などのインダストリーがサイズを縮小してテクノロジーに対応するべきだ。」

Yaniv氏
「テクノロジーは既にある、人々が追いついていない。ただそれだけの話だ。アーティストは4時間も5時間もサウンドチェックや編集などに時間を費やすが、たったの5分ですらどのように自分の音楽がテクノロジーによって分配されているのかを考えようとはしない。
アートと同じようにテクノロジーも練習すればそれは自分にとって自然になる。アーティストはアートを作る行為はするけど、他に興味を示そうとしない。テクノロジーは十分ユーザーフレンドリーになった。例えば、Youtubeは最高の分析ツールを提供してくれている。フィンガープリント技術を使って、音楽がどこで誰に再生されたのかなどが一目でわかる。このように自分たちの音楽がどこで使われているかを知ることは、ミュージシャンにとって極めて重要なことだ。

アーティストは今世の中にあるものに目を向けるべきだ、そうすれば音楽業界もかなり便利に変化するだろう。」

Eyal氏
「どの役割かにもよるが、人々の役割をテクノロジーで置き換えることはできない。まだ人が必要だと思う。例えば、今はSpotifyのAIがパーソナライズされた曲を自動で提案してくれるが、まだ人から聞いたおすすめ曲を聞きたい時もあるし、雑誌を買って読みたい時もある。
これはタスクではない、ライブだ。人々のコネクションで起こるものだ。テクノロジーがそれを代替できる事実も理解できるし、効率を上げてくれるのかもしれない、だが、世の中には人の行動がコアになって起こる事象が多々ある。それらはテクノロジーによって取って代わられるべきではない。」

 

日本にはAKB48というバンドがあって、ファンは同じCDを何枚も購入する


イベントの終盤には、そのイベントで唯一のアジア人である私が日本の音楽のトレンドについて質問を受け、AKB48のようなアイドルユニットが人気だと言う話をするとYaniv氏がそれに対する見解を述べてくれた。

Yaniv氏
「CDは今現在も日本とドイツで最も売れている。
日本もドイツも超テクノロジー大国であるにもかかわらず、ストリーミングではなく彼らにはまだまだ活発なCDマーケットがある、それは素晴らしいことだ。
十代の若者は何枚も同じCDを買って友達に配るという。
これは彼らのお金が余っているわけではない。」

「例えば、AKB48というバンドはCDの中に違うカードを入れて販売した。それでファンはそれらすべてを集めるために多くのCDを買う。これが日本のCDマーケットの動きで、極めて賢いマーケティング戦法だ。」

「こんな予想外の方法で成功している国もあるんだ、この先何に価値が残って、何が淘汰されるかなんて全くわからない。」

 

まとめ


音楽とテクノロジーの間には確実にギャップが存在する。

単純に効率や利便性を求めればいいというものでないのが音楽だ。
文化や、熱意、信念という数字で表すことのできないものがコアにあり、両者は相まみえることのないように思えるが、アーティストはもっとテクノロジーに興味を示すべきで、テクノロジーは人々にとってさらにアクセスしやすくなるべきだ。そうすればアーティストのテクノロジーに対する理解も深まり、その時代に合った新しい音楽の文化が生まれることだろう。

また、この先ブロックチェーンが業界に入り込んできたり、新たに著作権に関する法律が制定されたりする可能性もあるなど、日本のAKBの例が上がってたように、全く予想できないのが音楽業界だろう。

 

(文:小西雄也)

今回参加したのはMTIsというMeetupグループが主催する「Cut the midde man」と題するミートアップで、イベントオーガナイザーはRevital Hollander氏 と Rani Dar

https://www.meetup.com/ja-JP/MusicTechnologyIsrael/events/241136975/

 

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